セミナー・スクール情報 > 開催講座等 > 全国職業能力開発推進者経験交流プラザ 平成13年度 第2日目 > TQC「カエル(蛙)運動」を背景としての事例

徹底した「かえる運動」を展開
 受け入れ後の技能育成教育について、私は毎年入社式で「お・あ・し・す」ということを話します。「おはようございます・ありがとうございます・しつれいします・すみません」ということを15分くらいだけ話します。ただし、それだけで終わってはいけません。入社式で私が言った言葉を実行しているかどうか関係者が忘れずにフォローする事が重要です。言いっ放しでは言った意味もなくなります。以前は6〜7日かけて外部でやっていた座学を、スピードの時代ですので1日に短縮しました。そして決意文を書かせ、その後も関係者がフォローしています。入社当初の意欲を忘れかけていると感じる者に対しては、再度自分の決意文を読ませるなどの気を使いながらフォローをしております。
 「かえる運動」についてです。「かえる運動」をキックオフしてから11年経っておりますので、当初とは少し変わっております。平成2年に創立30周年を迎え、会社の業績もまあまあでしたが、大きな成長もしないということでした。これは私のトップとしての行動の仕方、発想の仕方に問題があるのだろうと考え、創業のときの毛布もなく筵の上で徹夜をしたあの気持ちを思い出し、自分自身の反省材料で自分自身を変えていこうということでこの運動を始めました。
 言うなれば[TQC]の品質管理運動です。大手さんではZD運動という事で、安いものを作るために各社やってきたわけですが、見ておりますと中堅企業、大手を含めて、3ヶ月・3年病といったように最初はいいのですが、組織があって専門スタッフがいるにもかかわらず、だらけて消えてきておりました。しかし、私共は技能教育に於いても育成に於いても経営に於いても全く的を得ているという考えを持っておりましたので、絶対に後に引く事はありませんでした。
 ○○運動といったものは忘れられやすいものですから、私は「かえる」のグッズ品を集めました。現在でも社員、取引先、お客様などから持ってきていただいております。「かえる運動」を忘れないように、名刺から封筒からありとあらゆるものを全て「かえる」で埋めました。「かえる」尽くしです。会社の入り口から、30周年、40周年時に作った大きなモニュメントも全て「かえる」です。私は、「かえる運動」、「提案運動」を社員が皆、会社のためではなく自分のためにやってくれていると思っております。今現在も引き続き、各セクションの提案をそれぞれ評価して、毎月表彰しております。
 「かえる運動」開始のきっかけは色々ありますが、岡本太郎という今は亡き大先生とお話しする機会がございました。その時に岡本先生が「人間は夜寝て起きたら生まれ変わるのだよ」とおっしゃったのです。一年に一度だけが誕生日ではない、毎日が誕生日、生まれ変わりなのだという事です。それ以後私は、人と出会うという事を強烈に意識しまして、異業種交流はもちろん、こちらからいろいろなところへ出かけていくようにしております。出マメ・足マメになっていい人と出会おう、いい人と出会えばいい仕事とめぐり合える、というように連結して考えました。営業の者は特に受身ではいけない、いい人と出会うために自分が切り込み隊長になれ、と常々と言っております。
 「かえる運動」を一言で言うと、意識革命です。私共の横浜本社はスタート工場ですので、場所がなく、狭いところです。数値制御のマシンなども本社には2〜3台くらいしかありません。後は全部償却の終わった古臭い機械で物を作っております。しかし、機械が製品を作るのではありません、人が機械を使って製品を作るので、人が主人公で製品を作るのです。機械は償却し終わっておりますから、安く済みます。お客様からは怒涛のごとくコストダウンを要求されます。新しい機械を導入し、加工するスピードを速めれば良いのですが、本社の場合ですとベルトコンベアがない、溶接ロボットもない、NCマシンもないのですから、この「かえる運動」によって「心の合理化」、やる気に変えるということしか加工時間を短縮する方法はないのです。こういった狙いを持って「かえる運動」をキックオフしたわけです。
 「かえる運動」の背景ですが、主に新人に関して先輩を親ガエルとして、特に熟練技能の場合は人によって教え方が違いますから、ヘラ絞り・打ち出し板金の場合は特に親ガエルをしっかりとつけて、一年間手取り足取り教えていきます。その時に必ず教えたポイントはノートに記録させるようにしております。親ガエルとなる先輩には「かえる任命書」というものを渡しています。これもやはり口で頼むだけではなく、「かえる」のついた任命書を渡す事でかなり「かえる」のご利益を得ています。
 昨今のスピード時代で加工時間を短縮しなければなりませんので、仕事はかなりきついと思います。それを和らげ、おもしろおかしく仕事ができないかという狙いもあって、「かえる」を登場させているわけです。昔の話ですが、町工場から技能五輪を出そうという事で、訓練校の先生のお宅へ社員を預けて訓練させた事もありました。その名残もありまして、技能者手帳という物を作りまして、資格を取った、指導員免許を取ったという時に会社側で記入していきます。ですから、現在でも卓越した技能者は手帳が数枚になっておりまして、自分の技能を蓄積した足跡が技能手帳に全て網羅され、その人の一つの歴史になっております。運転免許証と同じように大抵の作業員は持ち歩き、この技能者手帳の価値を認識して頂いているように感じております。


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